個人TNRへ向けた現場確認(Nさん)

長崎県地域猫活動連絡協議会で月1回(第2土曜日)開催している「ねこ会議」に、個人TNRの相談に来られたNさんの現場について、確認に行ってきました。


ねこ会議にTNRの相談に来られる方の質問は、大きく分けて2つあります。

  1. 面倒を見ているノラねこの数が増えてきたので or 子ねこが生まれては死んでいってかわいそうなので、つかまえて手術をしてやりたいが、ひとに慣れてないのでどうやってつかまえたらいいのか
  2. 数えてみると、不妊化手術が必要なのはけっこうな頭数になるが、なんとか安く済ませることはできないか

そしてどちらの場合でも、「餌をやったりしていると、いろんな苦情を言われたり非難されたりするので、つらい」という感想を持っていらっしゃることは多いです。

ねこ会議では、そうした質問や相談、愚痴などをうかがいながら、相談者の方とその方が面倒を見ているねこ、それにそのねこたちが暮らす町内環境にとって、少しでもプラスとなるような手立てとしてはどんなことが考えられるか、出席者の経験をもとに、あれこれ頭をひねります。協議会に参加しているメンバーの大まかな方向性としては、「不妊化によって子ねこの増加にストップをかけ、あわせて適切な『管理』を行なうことで周囲の理解を得る」というのが原則となります。協議会がチャリティーカレンダーを毎年作成して、地域ねこ活動に伴う不妊化手術に助成を行なっているのも、この基本原則に依ります。

ねこ会議で相談を受け、相談者の方もまた不妊化に前向きの場合、助成できるかどうかを確認するために、現場へ赴いて確認作業を行なうことになります。確認をしたい点は概ね3つ。

  1. 現在、どんなふうに実際にお世話をしているのか。ねこは何匹くらいいて、年齢・性別はどうなっているか、健康状態・人慣れ具合はどうか。餌やりのしかたや場所、糞尿の始末状況など。自分一人でされているのか、家族や友だちと一緒にできているのか。
  2. ノラねこ(外ねこ)対象の助成枠は、協議会の地域猫活動助成のほかにいくつかあるが、それぞれの条件に合致させることができるか。特に、そのひとの「飼いねこ」ではないと言えるか、かつ、そのひとは助成を受けたねこを終生管理する意志があるか(実は両者は矛盾するのですが)。
  3. 現場周辺の住民の方々とノラねことの関係は、どの程度良好/険悪か。ノラねこのための雨よけ・防寒ハウスや、餌皿・水飲み皿、餌やり跡などを見つけることができるか。逆に、ペットボトルやネット・柵、トゲトゲなどのねこ避けを設置している家はどの程度あるか、また、餌やりを禁止する立看板などがあったりするか。

3つに分けてはみましたが、どれも結局は「適切な管理が可能か」というところに落ち着くと言えます。相談者さんの意志が必要であることはもちろんですが、相談者さんの意志だけでどうにかなるというわけでもなく、ねこの側の都合もありますし、周囲の環境にも大きく左右されます。

で、まあ、Nさんのところへ行ってきました。長崎市内の旧市街地ですが、場所は伏せます。


Nさんのところでは、2013年6月に1匹のキジ母ねこが4匹の子ねこを連れてきましたが、その後その母ねこが病死し、おそらくそのキジ母ねこの姉妹と思われる叔母ねこが4匹を育てるようになりました。1匹は途中で姿を見せなくなり、現在叔母ねこ(グレーキジ?)と3匹の6ヶ月齢の子ねこ(麦わらサビ♀、クロサビ♀、長毛キジ♂)が残っています。

また、それとは少し離れた場所で、三毛の母ねこが9月ごろに4匹の子ねこ(チャトラ♂、チャトラ♂、チャトラ♀、三毛♀)を連れてきて、そのうちチャトラ♂は最近姿を見せなくなったものの、やはり母ねこ+3ヶ月齢の3匹の子ねこが残っています。

2つの家族は一緒になりながら、概ね50mの階段続きの斜面地を8匹(+α)のねこたちがちょろちょろする環境を、Nさんがこれから管理をしようということになります。

今回、叔母ねこ(グレーキジ?)と、6ヶ月齢の長毛キジ♂は確認できませんでしたが、残りの6匹については写真で確認ができました。

 

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6ヶ月齢の麦わらサビ♀長しっぽ=チャツネちゃんは、もしかすると早くも妊娠している可能性あり。ひとにもねこにもフレンドリー。

 

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チャツネちゃん

 

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同じく6ヶ月齢のクロサビ♀=ビギちゃんは、やや警戒心が強いが、人に近寄らないというほどではない

 

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三毛母ねこ=オカアサン。けっこういい年らしく、また多産で、この界隈にいる子たちは少なからずこのオカアサンの子であるらしい。

 

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オカアサンの背中には星がある。そしてきれいな長しっぽ。

 

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3ヶ月齢のチャトラ♀とオカアサン

 

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3ヶ月齢のチャトラ♀は、オカアサン似の美人さん。しっぽは中くらいの長さで、先っちょが複雑なカギ。

 

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3ヶ月齢のチャトラ♂。しっぽは細長くて、先っちょがカギ。左で向こうを向いているのはチャトラ♀。

 

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右チャトラ♂、左チャトラ♀

 

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最初は警戒していたチャトラ♀(左)と、3ヶ月齢の三毛♀=ピケちゃん。ピケちゃんは、慎重なタイプ。

 

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ピケちゃんも、オカアサン似で縞三毛&きれいな長しっぽ。


おそらく、チャツネちゃんとオカアサンをまず不妊化、あまり間を置かずにビギちゃんと叔母ねこ(グレーキジ?)を続けて不妊化、その後今3ヶ月齢の子たちが性成熟に達するころに6ヶ月齢の長毛キジ♂と合わせて不妊化、という段取りになるかと思われます。

また、実はNさんは、この子たちに餌やりをしていません。不妊化せずに餌だけやるのは無責任だと考えて、ずっと我慢してこられたのですが、それにしてはこの子たちの栄養状態は良好です。とすると、この子たちには明らかに他の餌やりさんのお世話も受けているはずで、しかも餌やりさんは複数おり、そのなかにはいわゆる「困った餌やりさん」がいる可能性が高い。カリカリをばらまいてそのまま放置している跡があったほか、魚の中骨がまとまって地面に散らばっているところもあったりしました。

地域ねこ活動=地域に容認された外ねこのお世話に持っていくには、こうした他の餌やりさんと連携し、地域に迷惑をかけるような餌やりのしかたは改めていってもらう必要がどうしても出てきます。それには、地道な対話作業を一つ一つ積み重ねていかなければいけない。地域住民への働きかけとは別に、餌やりさん(地域内かもしれないし、外から来ているかもしれない)への働きかけも行なうとなると、かなりの時間と労力を必要とします。今のNさんにその余裕はないため、今すぐにここで地域ねこ活動に取りかかるというのは現実的ではありません。

とりあえずはNさんができる範囲で個人TNRを行ない、徐々に協力者を見つけながら地域へ活動を広げていくことができるといいなあ、というのが、現地確認をしたさるねこ父の結論です。